土壌汚染の除去費用の請求が棄却された事例(判例タイムズ1385号)
最近弁護士らしいことを書いていなかったので,ここで少し。
判例タイムズの1385号に「土壌汚染調査の結果,環境省の環境基準および自治体の指導基準を上回る土壌汚染があった場合は,売主は土壌改良もしくは除去の費用を買主に支払うものとする旨の条項がある土地売買契約において,当該土壌から砒素が検出されたが,土壌汚染が自然的原因による場合には上記条項が適用されないとして,土壌汚染除去費用の請求を棄却した事例」が載っていたので,この判例についての感想を書いておこうと思います。
私も,土地売買の際の土壌汚染について相談等を受けたことはあるのですが,土壌汚染は調査にも結構な額の費用がかかりますし,深いところまで汚染がある場合には,その除去にはかなりの費用がかかります。
そして,環境基準は,確か当該土壌に地下水があり,それを長期間飲用に使った場合に人体に影響が与える量というのを基準の一つにしているので,人が全く汚染等していなくても,土地によってはもともと環境基準以上の物質を含んでいることも多いらしいです。
今回の判例についても,砒素の由来は,八甲田山系の温泉水等を原因として青森平野全体に堆積した専ら自然的原因によるものと認定しています。
今回の判例は,売買契約書に上記のような条項がある場合であっても,買主の専門性(今回の事案では買主は不動産会社),売買契約締結のj経緯(汚染が自然的原因による場合に費用を負担することについて,費用が巨額になる可能性があるのに買主がなにも述べていないこと等),環境基本法においては,汚染が専ら自然的原因によることが明らかと認められる場所に係る土壌については環境基準を適用しないとしていること等から,上記条項について,自然由来の汚染の場合は,「環境省の環境基準」に含まれないと判断しました。
しかし,現在では土壌汚染対策法が平成22年に改正されており(上記判決の売買は平成18年),調査義務が課される場合についてはかなり絞られているものの,自然由来の場合にも届出・措置の対象とされています。
そのため,契約書上は,自然由来のものは除くなどと明確に規定しておいたほうが安全だと思われます。
土壌汚染については,土地の売買等に関して近時問題になることが多いので,気になる点がある方は一度弁護士に相談されるのがよいと思います。
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