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偽造と変造

 3月も今日で終わりなので,明日からは新年度が始まります。

 この時期は裁判官の人事異動があり,裁判の期日が入らないので,弁護士としては時間をかけて個別の問題に取り組めるよい時期ではあります。

1 公文書の改ざん

 最近,ニュースで公文書の改ざんが話題になっています。

 議会と行政の関係等からすると,非常に問題だと思います。

 ところで,この問題の刑事罰とのからみでニュースでも公文書の偽造や変造という言葉がよく出てきていますが,皆さんはこの違いが分かりますでしょうか。

2 偽造と変造

 偽造は日常でも使うことがありますが,変造はあまりつかうことはないかと思います。

 ただ,文字からすれば片方は偽って造ることで,もう片方は変えて造ることなので,語感としてはあまり違いはないように思われるかもしれません。

 ただ,法律上は,両者の意味は明確に区別されています。

3 偽造

 法律上,文書偽造とは,作成する人を偽って文書を作成したり,作成権限がない人が文書を作成することとされています。

 他人の名前を使って文書を作ったりすることがこれにあたります。

4 変造

 変造とは,一旦真正に作成された文書の内容を,作成権限のない者が変更することです。

 正確ではないかもしれませんが,存在している文書を改ざんすることがこれにあたります。

5 偽造と変造を区別する意味

 どちらもダメなことですので,あまり区別する意味がないのではないかと思われるかもしれません。

 しかし,条文が公文書偽造等の罪の1項と2項というように異なっているので,異なった定義があたえられています。

 文書偽造については,偽造・変造以外に,有形偽造や無形偽造等の区別もあり,概念の区別がなかなかややこしいところではあります。

6 まとめ

 今ニュースになっている公文書改ざんについては,どちらになるのでしょうか。

 今回の場合だと,いったん作成されたものの内容を変更しているので,変造になりそうです。

 ただ,内容の同一性が失われるほど大規模に変更されている場合には,変造ではなく偽造にあたるとする裁判例もあります。

 また,今回の場合では,改ざんを指示したのが上司等にあたるため,作成権限がないとはいえないので,そもそも偽造,変造にあたらないとの意見もあるようです。

 

 今のところは,この件が立件されるのかどうか注目していきたいと思っています。