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破産と退職金

 破産とは,簡単に言うと,財産をすべて売却する等してお金に換えて,それを各債権者に平等に分配した上で,それでも残ってしまった借金等の債務を免除するという一連の手続きになります。

 皆さんは,財産というとなにを思い浮かべますでしょうか。

 土地等の不動産,預金,自動車等は,すぐに思い浮かぶと思いますが,破産手続きにおいては,普段,財産としては意識しないようなものも財産として扱われることになります。

 その典型例が退職金です。

 退職金は,賃金の後払いとしての性格を有するので,破産手続開始時の退職金債権は,破産前の労働の対価と考えられます。

 ようは、退職時に急に発生するものではなく、月々の労働の対価として少しづつ積立てられているというように考えるわけです。

 そのため,破産手続開始時に自己都合で辞めた場合の退職金額が財産として扱われることになります。

 ただし,退職金はその4分の3が差押禁止債権とされています。

 また,将来支給されるかどうか不確実な部分もあるため,定年まである程度期間がある場合には,そのことも考慮され,差押禁止とならない4分の1のさらに半分,8分の1の範囲が破産手続きで換価の対象となる財産となります。

 しかし,破産者に退職を強いるのは相当でないと考えられているので,その金額が99万円の範囲であれば、自由財産(生活等の必要性から,お金に換える必要がないとされる財産)の範囲を拡張し、退職金の8分の1部分についても自由財産として換価の必要なしとすることが多いです。

 ただ,退職金の金額が自由財産の範囲(原則99万円)を超えるような場合は,上記のような取扱いをすることが難しくなります。

 そのため,そのような場合で,かつ,仕事を辞める予定がない場合には,破産ではなく,個人再生等別の手続きを取ることを検討することになります。

 詳しくは、弁護士にご相談ください。