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個人再生と滞納税金等

 借金問題でお困りの方の中には,借金だけでなく税金や国民健康保険料を滞納されている方もおられます。

 では,民事再生を行った場合,このような支払いはどうなるでしょうか。

 結論から言うと,このような請求は個人再生の影響を受けないばかりか,滞納があることが個人再生の手続きをとることを難しくすることさえあります。

 まず、個人再生手続においては,租税の一般優先性が働く税金等の租税債権や,国税徴収,国税・地方税滞納処分の例により徴収し得る健康保険料等については,一般優先債権となります。

 一般優先債権は,再生手続によらないで,支払期日にその都度弁済しなければならず,個人再生での債権カットの対象になりません。

 加えて,これらの滞納処分については,強制執行等に対する中止又は取消命令の対象とはされていないので,個人再生の手続上,支払いが遅れている場合の滞納処分を回避することはできません。

 そのため,税金や健康保険料を滞納している場合には,これを考慮に入れず個人再生を申し立て,再生計画を定めたとしても,滞納処分がなされた場合には再生計画の履行の困難になるとして,再生計画認可前に手続廃止決定がなされる可能性もあります。

 したがって,個人再生の手続きを取る際には,税金や健康保険料の滞納については,できる限り支払っておくのが望ましいといえます。

 滞納が多額で,支払いが困難な場合には,あらかじめ課税庁と期限の猶予や長期分納協議を行い,その了解を得た上で,税金や健康保険料の支払いを前提としたうえで,合理的かつ履行可能性のある再生計画案を作成していく必要があります。

 なお,国民健康保険料や国民年金等については,申請による減免や徴収猶予の制度がありますので,要件を充足する場合には,適用を申請する必要があります。

 このように,税金等の滞納がある場合には,個人再生の手続きで債権がカットされることはなく,個人再生の手続き外で支払っていくことになりますが,その支払いが可能かどうかは個人再生を申立をする上で,非常に重要な要素となります。

 詳しくは,弁護士にご相談ください。