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弁護士法人心 東海法律事務所




自己破産のデメリット

最近、めっきり秋めいてきて,過ごし易くなってきました。
今日は,自己破産のデメリットについてまとめておこうと思います。
 
1 財産を処分し,債権者への支払いに充てる必要があること
⑴ 自己破産とは,簡単にいうと,財産を処分して,それを債権者への支払いに充てるかわりに,それでも残った借金については 免除(免責)するという手続きです。
そのため,自宅や車等については処分しなければならない場合があります。
⑵ ただし,すべての財産を処分しなければならないわけではなく,生活に必要な家財や一定額の範囲の現金・預金等については残せることになります。
また,管財人がつくことになりますが,99万円までについては自由財産として残せることが多いですし,場合によってはそれ以上の部分についても残せることがあります。
 
2 債権者平等の原則
⑴ 破産は,裁判所を介して,債務を免除するという手続きです。逆からとらえると,裁判所が,銀行等の債権者に強制的に不利益を課す制度であるともいえます。
そのため,債権者間の平等が重視されます。
具体的には,破産はするのだけれど,お世話になった親戚や勤務先には返済を続けたいということは基本的に許されません。
債権者はすべて裁判所に報告する必要がありますし,破産手続中は一切支払いをすることはできません。
そのため,借入先には,破産をしたということが知られてしまうことになります。
⑵ ただし,破産手続後に,生活を再建してから,支払うことまでは禁じられていません。
 
3 資格制限
破産をすると,資格や職業によっては制限をうけることがあります。
制限を受ける資格や職業は,主に他人の財産を扱ったり,管理したりする内容に関するものが多いです。
そのため,そのような資格や職業につかれている場合には,破産される前に制限をうけないか確認する必要があります。
 
4 その他
⑴ 官報
破産をすると,その旨官報に記載されることになります。
ただし,一般の人が官報を確認することは非常に稀だと思います。
⑵ 破産者名簿
破産しても,戸籍や住民票に記載されることはありません。
本籍地の市区町村役場の破産者名簿に登録され,同役場発行の身分証明書には記載されることになりますが,身分証明書を提出しなければならないことはほとんどありませんし,免責許可が確定すれば破産者名簿からも削除されます。
⑶ ブラックリスト
破産をすると,その情報が金融機関等が利用している信用情報機関に登録されます。そのため,最長10年間,借入れやクレジットカードの新規作成,ローンの利用等ができなくなる可能性が高いです。
 
こにように,自己破産のデメリットはいろいろありますが,それ以上に支払い義務がなくなるというメリットが大きいことも多々あります。
借金の返済等でお困りの方は,一度,弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
 

個人再生の場合の最低弁済額

1 最低弁済額

個人再生では,再生計画を作成し,その内容に従って支払いをしていくことになります。

再生計画によって支払う金額は,最低弁済額以上である必要があります。

最低弁済額は,

  •  基準債権総額による計算,
  •  清算価値
  •  給与所得者等個人再生の場合は,可処分所得の2年分

により決まります。

 

2 基準債権総額による計算

個人再生では,債務の総額(住宅資金特別条項を定める場合は,住宅ローンを除いた額)の内の一定額については,最低限支払いをする必要があります。

具体的には,

100万円未満の場合            債務の総額

100万円以上から500万円以下の場合   100万円

500万円以上から1500万円以下の場合  債務の総額の5分の1

1500万円以上から3000万円以下の場合 300万円

3000万円以上から5000万円以下の場合 債務の総額の10分の1

となります。

この金額は,最低限支払う必要があります。

3 清算価値

清算価値とは,簡単に言うと,破産した場合に債権者への支払いに充てられる配当額のことです。

個人再生では,債権者に対し破産した場合より高率の配当を受けられることができるよう,最低限度額は,清算価値以上である必要があるとされています。

そのため,財産等がある場合,例としては,住宅ローンがいわゆるオーバーローンの状態になっていない場合には,上記の基準債権総額によって計算した以上の額を支払っていく必要が生じる可能性があります。

 

4 可処分所得の2年分

小規模個人再生の場合にはこの基準はないのですが,給与所得者等個人再生の場合には,最低限度額は,可処分所得の2年分を下回ることはできないとされています(なお,この基準がない代わりに,小規模個人再生では債権者の過半数の反対がないことが必要になります)。

可処分所得とは,給与所得者の収入から税金等や最低限度の生活を維持するために必要な費用を差し引いた金額によって決まります。この最低限度の生活を維持するために必要な費用は,生活保護の際の基準等により決まります。

 

5 以上,3つの計算された金額のうち,もっとも大きい金額が最低弁済額となります。

個人再生では,この金額を原則3年,場合によって5年間で支払っていくことになります。

 

名古屋市みなと区で個人再生をお考えの方は,弁護士法人心にご相談ください。

 

送達について②

6 付郵便送達

訴状等が送達できないと,裁判の手続きを進めることができません。

では,訴えられた場合,家を留守にしておいて,訴状等が送達不能になるようにすればよいのでしょうか。

いいえ,そんなことはありません。

住所等に対して,補充送達及び差置送達によっても送達をすることができない場合には,付郵便送達をすることができます。

この送達方法は,発送した時点で,送達の効力が発生するとされているので,当該書類が実際に到達しなかったとしても,送達されたことになります。

そのため,一回は,不在にすること等によって送達不能にすることができたとしても,付郵便送達をされてしまうと,受け取っていなくとも,法律上は裁判所から送られてきた書類を受け取ったことにされてしまうのです。

ただ,これをするには,本当にそこに住んでいること等を調査したりすることが必要な場合もありますので,行うには手間がかかることもあります。

 

7 公示送達

なお,以上の送達方法は,住所等が分かっていることが前提でしたが,住所等が分からない場合には,公示送達という方法によって書類が送達されたことにしてしまうという方法もあります。

 

8 まとめ

このように,書類を受け取らないという方法によっては,裁判は避けれらないことが多いです。

ですので,裁判所から書類が届いたら,まずは,受け取り,それをもって弁護士に相談しに行くのがよいと思います。

 

送達について①

1 送達とは

裁判で訴えられると,裁判所から訴状が届きます。

この訴状を送る等,裁判所が重要な書類を送ることを「送達」といい,法律で方法が規定されています。

 

2 特別送達

この送達は,多くは「特別送達」といわれる,郵便による送達の方法を取られることが多いです。

もし,封筒に「特別送達」と書かれた書類が届いたら,それは正規の方法で裁判所から送られてきた書類の可能性が高いです。

いたずらや,架空請求だと思って放っておくと大変なことになってしまう可能性があります。

身に覚えがなくてもあっても,弁護士に相談しましょう。

 

3 補充送達

なお,特別送達は,郵便の配達職員が,本人に渡すのが原則ですが,書類の受領について相当のわきまえがある者,たとえば従業員や同居人に渡すこともできます。

この方法を補充送達といいます。

 

4 差置送達

また,本人や同居人が受領を拒否した場合には,送達先においていくこともできます。

これを差置送達といいます。

 

5 送達不能

ただし,誰もいない場合には差置送達もできないので,「郵便物お預かりのお知らせ」を郵便受けに投函することになり,送達すべき書類を持ち帰ることになるのですが,留置期間ないに本人が取りに来ない場合には,送達不能となり,裁判所に返却されることになります。

 

では,送達不能になった場合はどうなるのでしょうか。

それについては,また,来月に記事にしようと思います。

債務整理とは

私は,主に債務整理を担当することが多いので,今日は,債務整理とはどのようなものか簡単に説明しようと思います。

1 債務整理とは

  債務整理とは,借金やクレジットカード等の支払いができなくなってしまった場合に,それを整理するものになります。

  支払いが厳しい場合に,どこか銀行等からおまとめローンを組んで,借金等を一本化することにより,月々の支払額を減らすという方法もありますが,これは弁護士の守備範囲ではありません。

  弁護士の行う債務整理とは,大きくは破産,個人再生,任意整理に分かれます。

2 破産

  破産とは,支払いが困難な場合に簡単に言うと,持っている財産をお金に換え,それを借金等の支払いに充てる代わりに,残った借金を0にするというものです。

  そのため,少額であれば手元に残せることが多いのですが,不動産等の財産は手放さなければならないことが多いです。

 

3 個人再生

  個人再生とは,支払いが困難な場合に,財産の総額か,法律の規定等に従った金額等に借金を減額し,それを3年から5年で支払っていくという手続きです。

  これは,担保等に入っていない財産をお金に換える必要はないのですが,少なくとも,その価格分については支払っていく必要が生じます。

 

4 任意整理

  任意整理とは,弁護士が債権者との間にはいり,支払額等を見直すという手続きです。

  これは,裁判所を介さないので,手続きの自由度は高いのですが,支払額等の変更には強制力はないので過払金等がない限り,減額等は難しいことが多いです。

 

  どのような方法をとることがよいかは,個人個人の事情によって,異なります。

  まずは,弁護士にご相談ください。

司法取引等についての雑感

明日から,とうとうゴールデンウィークが始まります。
 
1 司法取引等
ところで,6月から刑事訴訟法の一部の改正が施行されることになり,司法取引や,刑事免責に基づく証言強制制度等が行われることになります。
正直,実際にやってみないと,どのようの形で動いていくのかわからないところはあるので,国選等の場合でも,共犯がいるような場合には慎重に動いていく必要が生じてくるのだと思います。
 
具体的には,取引の可能性等があるのであれば,それをつかって減刑等の可能性を残すために,とりあえず黙秘した方がよいというアドヴァイスをすることが,今まで以上に増えることになるのかなと思っています。
 
2 制度と文化
こういったことがあると思うのは,これまで外国の方は,黙秘したり,否認することが多いが,日本人は,正直に話して反省をしていることを示そうとするというようなことを聞いたことがあります。
 
しかし,実際にそういった傾向があるとしても,民族性とかの問題ではなく,結局は制度の問題なのではないかと。
 
どういうことかというと,司法取引等がある場合は,取引を行うためには黙秘,もしくは否認する必要があるので,そのような制度がある場合には,弁護士も取引を持ち掛けてくる可能性があるのであれば,しゃべるなというアドヴァイスをすることになる。
逆に,そういったことがなく,かつ,実際にやっているのであれば,アドヴァイスとしては,正直に話して,反省しているところ見せることが減刑につながることになるというものになる。
 
なので,正直に話すか,とりあえず黙秘することが多いかは,司法取引という制度の有無による面も多いのではないかと思います。
ただ,これは何のエヴィデンスもない感想ですので,ひょっとしたら全く間違っているかもしれないです。
また,日本で導入される司法取引も,自分のことではなく,共犯者や他人の犯罪について知っていることしか取引には使えないので,この制度が導入されたからといって,大幅に黙秘したりすることが増えるということもないのかなとも思っています。
 
まさか,弁護士になった時には,日本にもこのような制度ができることになるとは考えていなかったので,ちょっとびっくりしています。
 
この先,10年,20年と進んでいくと,いままで当たり前に思っていたものがかわったりすることも増えてくるのでしょうね。
 

偽造と変造

 3月も今日で終わりなので,明日からは新年度が始まります。

 この時期は裁判官の人事異動があり,裁判の期日が入らないので,弁護士としては時間をかけて個別の問題に取り組めるよい時期ではあります。

1 公文書の改ざん

 最近,ニュースで公文書の改ざんが話題になっています。

 議会と行政の関係等からすると,非常に問題だと思います。

 ところで,この問題の刑事罰とのからみでニュースでも公文書の偽造や変造という言葉がよく出てきていますが,皆さんはこの違いが分かりますでしょうか。

2 偽造と変造

 偽造は日常でも使うことがありますが,変造はあまりつかうことはないかと思います。

 ただ,文字からすれば片方は偽って造ることで,もう片方は変えて造ることなので,語感としてはあまり違いはないように思われるかもしれません。

 ただ,法律上は,両者の意味は明確に区別されています。

3 偽造

 法律上,文書偽造とは,作成する人を偽って文書を作成したり,作成権限がない人が文書を作成することとされています。

 他人の名前を使って文書を作ったりすることがこれにあたります。

4 変造

 変造とは,一旦真正に作成された文書の内容を,作成権限のない者が変更することです。

 正確ではないかもしれませんが,存在している文書を改ざんすることがこれにあたります。

5 偽造と変造を区別する意味

 どちらもダメなことですので,あまり区別する意味がないのではないかと思われるかもしれません。

 しかし,条文が公文書偽造等の罪の1項と2項というように異なっているので,異なった定義があたえられています。

 文書偽造については,偽造・変造以外に,有形偽造や無形偽造等の区別もあり,概念の区別がなかなかややこしいところではあります。

6 まとめ

 今ニュースになっている公文書改ざんについては,どちらになるのでしょうか。

 今回の場合だと,いったん作成されたものの内容を変更しているので,変造になりそうです。

 ただ,内容の同一性が失われるほど大規模に変更されている場合には,変造ではなく偽造にあたるとする裁判例もあります。

 また,今回の場合では,改ざんを指示したのが上司等にあたるため,作成権限がないとはいえないので,そもそも偽造,変造にあたらないとの意見もあるようです。

 

 今のところは,この件が立件されるのかどうか注目していきたいと思っています。

 

 

  

 

架空請求

2月は短いのであっという間ですね。

そして3月になれば今年度も残すところあと1月になります。

通常,3月の終わりから4月の初めは年度末で裁判官の異動があるので,

裁判の期日が入りづらくなるので,たまっている仕事を一気に進めていってしまいたい時期になります。

 

架空請求

さて,少し前になりますが,「法務省管轄支局 消費者訴訟告知センター」というところからの架空請求のハガキがかなり大勢の方に送られていたようです。

私の依頼者にも数名届いた方がおられ,相談の連絡がありました。

これは,裁判所のホームページにも架空請求である旨が記載されており,連絡等をせず,放っておけばよいものになります。

ただ,本当に裁判所から送られてくるものを放っておくと,債務名義が取られてしまい,強制執行,すなわち預金や給与の差押を受けてしまうことになります。

そして,その段階でなんとかしようとしても,一度,判決等が出てしまっている場合には,なんとかするのは非常に難しいです。

そのため,裁判所から来たものについては,放っておかず,弁護士に相談する等の対応をとる必要があります。

 

裁判所からの書類かどうかを確認する方法

ただ,本当に裁判所から来たものかどうかを確認するにはどうしたらよいでしょうか。

一つはハガキ等に書いてある番号が,本当に裁判所の番号かどうか確認してみたり,自分で確認した裁判所に番号に連絡して確かめるということが考えられます。

他には,裁判所からの文書は特別送達という,まさに特別な方法で送られてくるので,この形で送られてきたものは,ほぼ裁判所から送られてきたものと考えて間違いないと思います。

もし,身に覚えがないことで訴えを起こされた場合は,すぐに弁護士に相談しましょう。

 

 

賃貸人の義務

賃貸借契約は,双務契約であり,賃貸人は,目的物を賃借人が利用できる状態にして提供する義務を負うことになります。

そのため,目的物に問題があり,利用できない場合にはその修繕の義務を負うことになります。

判例上,賃貸人が修繕義務を負うためには著しい支障等が必要とされているものもありますが,

学説上は,基本的には著しい支障までは必要ないと解されているようです。

また,改正民法でも,たしか一部の利用できない場合の,賃料の減額を認めていたかと思いますので,

特約等がない限り,著しい支障とまではいかなくとも,賃貸人が修繕義務を負う可能性は高いと思います。

隣の部屋の騒音等についても,その程度が受忍の範囲を超えるような場合には,賃借人が利用できる状態にして提供したとはいえないことになると思われるので,賃借人は,賃貸借契約の債務不履行として賃貸人に損害賠償請求や,一部の利用ができないことと同視できるとして,家賃の減額等を求めることはできる可能性が高いと思います。

ただ,修繕の場合と異なり,隣の部屋の住人との賃貸借契約を解除させるなどの履行の請求まではできないのではないかと思っています。

少し,機会があって調べたので,覚書としてブログに挙げておこうと思います。

法律問題でお困りで,弁護士をお探しの方は,ぜひ,弁護士法人心にご相談ください。

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NHK受信料の時効の起算点

今年も残すところ、今日を含めてあと3日になりました。

弁護士業は,どちらかというと年末年始は時間ができることが多いのですが,今年はいつも以上に忙しかったです。

また,2017年をまとめる記事でも書こうかと思い,2017年のニュースとかを見直していたのですが,トランプ大統領の就任が今年の1月だったんですね。

もう,だいぶ前のことのような気がします。

 

さて,今月最高裁で,NHKの受信料について合憲と判断した判決がでました。

合憲とはなるだろうなとおもっていたので,その点に驚きはないのですが,ちょっと変わっているなと思ったのは,

⑴ 意思表示を命じる判決によって受信契約が成立する。

⑵ 受信契約の成立により,テレビ等の受信設備を設置した時からの受信料支払義務が発生する。

⑶ 受信料支払義務の起算点は,受信契約の成立時

と判断した点です。

契約をしないことによって受信料の支払義務を免れる人が生じないように,テレビを設置した後は,契約が成立する前の分についても受信料を請求することができるとした点は理解できるのですが,

過去にさかのぼって受信料の支払義務が発生するという契約を締結するということになるので,少し不思議な気がします。

そして,過去の受信料の支払義務も契約の成立により発生するとしたことにより,時効の起算点も契約成立時と判断しています。

これによって,逆からいうと,NHKの受信料は,契約を締結しない限りは,時効により消滅しないということになります(そもそも,発生していないので,消滅するわけがないということだと思います)。

この判決,裁判等によって強制的に契約を締結することになった場合,その内容がどのようなものになるのかという点について,いろいろと示唆が多いものだと思います。

 

 

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